« 電話のできないiPhone | トップページ | 磐音様を一言で言うと »

Cats in peace, world in peace

「ミリキタニの猫」 (9/8より公開)

お爺ちゃんの話を聞いていくうちに、お爺ちゃんの人生、私の知らなかった歴史を追いかけることになりました、というドキュメンタリー映画。
淡々とした毎日のスケッチ、紐解かれる歴史、同時進行で続く人生。
少しもセンセーショナルなところがないのがいいです。メジャー映画のように「愚民どもよ、驚け!笑え!泣け!」と押し付けがましくないところも。

お爺ちゃんは、日系米国人でホームレスで画家。
お爺ちゃんに興味を持ったのは、たまたま近所に住んでいて絵を見に来た若い映画製作者。「自分を撮ってくれ」と言われて、カメラの代わりにビデオで撮影し始めたのが映画の始まり。

撮影したハッテンドーフ監督は映画が「organicに出来ていった」と言っていた(そして「有機的に」と訳されていた)が、これは「偶然(あるいは運命)に導かれて出来た」ということなのではあるまいか。

2001年9月11日、煙を噴き上げるツインタワーに一人背を向け、いつもと変わらずに絵を描くお爺ちゃん。ここのシーンは異様で不思議で、「この人何者?!」と思わせます。
しかし彼も人間、煙に巻かれ咳き込んでいるのを見かね、監督は自宅にお爺ちゃんを同居させることに。前より小ざっぱりとしたお爺ちゃんの映像と話が、少しずつ増え。

ジミー・ツトム・ミリキタニは、日系移民の二世としてカリフォルニア州都サクラメント市に出まれ、幼児期に来日、広島で教育を受ける。
軍国化していく日本を去って米国に戻るが、日米が開戦すると全財産を奪われ敵性外国人として強制収容所へ。ここで市民権を放棄させられ、戦後も社会保障のないまま様々な職業に就き各地を転々とし、最後にホームレス画家となる。

――と、順序を追うのではなく、何かの拍子に(絵の説明をしたりとか)断片がぽつりと語られるのです。「ツール・レイク(強制収容所)は砂漠の中で、人が多勢死んだ。自分になついていた男の子によく絵を描いてやったが、幼いその子も死んだ」のように。また、広島に原子爆弾が落とされ、多勢の人々が一瞬にして死んだ、とも。
監督はそれを調べ、そこで何があったかを知る。歴史的事実が、目の前の老人の人生の断片として繋ぎ合わされていく。

幸いにも生き延びた70代以上の人に話を聞けば、程度の差こそあれ、みな戦争で酷い目にあっている訳で。肌で感じるのは「結局、一般人が一番割を食うんだなあ」ということ。持てる物を根こそぎ奪われる、「究極の大損」。そりゃあ「戦争なんてするもんじゃない」と言うに決まっています。
逆に「戦争をしよう」と言う人間は、我々一般人とは違う、損をする心配のない(あるいは何らかの得をする)人なのでしょう。まずもって堅気ではありません。そんなにやりたいなら「言いだしっぺが、その親あるいはその子と共に最前線に出る」というルールを作ってからやってね。

この夏70年ぶりに広島を再訪したジミー翁(公式サイト「来日レポート」)。
8月6日の式典はTVで見ていたけれど、あの目立つ赤ジャケ赤帽には気付かなんだ。
史上最低脳の大統領を戴く祖国をクソ呼ばわりしていた翁を、日本は失望させなかっただろうか(ほら、マイキャビネットしんちゃんとか……)。

そういえば、試写会の最後に生ジミー翁が登場したんですが。
いきなり歌いました、2コーラス。マイクは要らんと払いのけてた。
朗々としたいい声でした。映画の中でも日本の歌を歌い、その歌声に合わせて猫が鳴いている、とても平和なシーンがあります。

ジミー翁、ちゃんとした水墨画もお描きになるようですが、主流はペン画に彩色(祝画集出版!公式サイトからどうぞ)。この色使いがすごく東南アジアっぽく。思いがけないほどの鮮やかな色の取り合わせは、水木しげる翁に通じるところがあったり。お二人とも戦火をくぐり抜けた同世代(二歳違い)だし。
戦争に行った水木翁の総員玉砕せよ! (講談社文庫) にも、一般人にとっての戦争の現実がリアルに描かれています。
お二人の作品は戦争の正確な一面であり、死んでいった声無き人々の代弁であり、またその人々の鎮魂であるのだなあと。

まずは「ミリキタニの猫」ご覧下さい。
(一番好きなシーンは、翁が帰宅の遅い監督に「若い娘がこんな時間まで何してるんだ!」って怒るとこ。その逆パターンもあり、ほのぼのします。猫がまんまるお目々で「ねーねー」って言ってるシーンも)

おまけ

みで始まる珍しい苗字
本当に広島だけの名前なんですねえ。

|

« 電話のできないiPhone | トップページ | 磐音様を一言で言うと »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/234622/7538983

この記事へのトラックバック一覧です: Cats in peace, world in peace:

« 電話のできないiPhone | トップページ | 磐音様を一言で言うと »