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草若師匠に男泣き

すんません、本当は気分だけ「男泣き」(男子じゃないので)。

ちりとてちん」の草若師匠が常々素敵だなあと思っておりましたのです。
白髪交じりのボサ頭に不精髭、落語を捨て隠遁している飲んだくれ。飄々とお気楽な様子で主人公たちが右往左往するのを面白そうに見ているだけ。やわらかな関西弁と相まって、力の抜けたノンシャランっぷりが妙に男前で、男性陣の中ではダントツに魅力的。

これまた自然体というか天然な叔父さん(京本政樹氏。時々堂本光一氏に見えるんだよなあ)や、寡黙なようでボケまくりなお父ちゃん(松重豊氏。このメンツの中にいるとなんか若く見える)も魅力的なのですが、師匠渡瀬恒彦氏のカッコよさは、年季の入り方が違うと言いますか。呑気の裏にちらりと見せる憂いやら苦悩やらがもう渋過ぎて、どうしていいか分からないくらい。

ただ一人残るアフロ弟子(最初「葉加瀬太郎ヘアの長瀬智也」のモノマネかと思った)が師匠の芸を受け継ぎたいんだと孤軍奮闘する、主人公が祖父と繰り返し聞いていた思い出の落語テープが実は師匠の「愛宕山」だったとわかる、散り散りになっていた弟子たちが再び門下に集結する、高座に穴を開けて落語界を去ったという師匠の行動の真相が明らかになる、弟子たちの一門会に無関心を装う一方で稽古を聴きながら知らず口を動かす師匠がいる、と話は糸を手繰るように流れ。

一門会。師匠の下を離れていた間も落語を忘れられなかった弟子たちがそれぞれの成長を見せるのですが、息子であり弟子である小草若(中の人は千作さんの孫だけど、面白い子やねえ)、誤解ともつれた情が解けて泣きながらの「寿限無」で父へのラブコール。トリのはずのキムワイプ兄さんが崩壊した舞台の空気にビビり、アフロ草々が「愛宕山」をやり直そうかというところで。

やおら立ち上がり、高座に上がる師匠

それまでの伏線からこういう展開になるのは明らかだったにもかかわらず、泣けました……。飄々とした物腰の中に隠されていた師匠の落語への情熱。弟子たちの熱演を引き取って、しかし飽くまで自然に淡々と始まる「愛宕山」。和田家にとっても、徒然亭一門にとっても、物語の糸が一気に手繰り寄せられた感のあるシーンで、もう滂沱の涙。

ううっ、カッコ良すぎるぜ渡瀬さん。

正直あまり眼中になかった方なのです、「映画ではヤクザ役、ドラマでは刑事役の人」ってくらいの認識で(失礼千万、すみません)。
しかし、他の人とは纏う空気が明らかに違う。それが分かったのは今日の放送でした。自らの復帰を、借りのある天狗芸能に報告に来たシーン。見るからに玄人筋の社長(←竜雷太さん…ですよね?)に、菓子折を渡し挨拶する師匠。髭をあたり髪を整え、紋付き袴の姿ながら、その眼光も雰囲気も思いっきり玄人な渡瀬さん。ここだけ見たら組事務所のシーンだと思うほどでした。「板子一枚下は地獄」という意味では、芸人もヤクザも同じなのかも知れません。
ああ、だから渡瀬さんが草若師匠にキャスティングされたんだなあ……としみじみ頷く一シーンでした。東映任侠映画を支えていたキャリアは伊達じゃありません。

ボサ頭の枯れた凄味が好きだったんだけど、現役復帰した師匠も見守らせて頂きます。(玄人役っちゃ、粋なお婆ちゃんの江波さんもバリバリの玄人役の多い方でしたねえ)

「渡瀬は本物」って意味がやっと分かった2007年冬。東映ものは機会があったら見ます。

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