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「少女マンガパワー!」を見る

川崎市民ミュージアム

人が少ないので若干ビビったが、平日早めの時間ならこんなもんか。逆に人でごった返したらとても見る気になれないので良かった。

普段ジャンルを意識せずにいるので、あらためて「少女マンガというジャンル」と聞くと、ああそういう分類の仕方ってあったんだよなあ、と思う。確かにこれまで読んできた漫画のうち、おそらく半数は少女マンガと言えるのでしょう(しかし負けないくらい少年マンガも読んだはず)。
50年に及ぶ「少女マンガ」の歴史の展示は実に多種多様で、逆に「少女マンガ」という分類以外にこれらをまとめる言葉が見つからない。

以下、展示を見ての覚え書き(図録1500円を買ってこなかったので、記憶違いあるかも)。

以前の記事に出展作家をメモしておいたけれど、要するに年代順・作家ごとに、原稿・原画(またはその複製)が並んでいます。

まずは手塚治虫先生。「リボンの騎士」の原稿は複製の描き直しとか何とか、かなりコンディションが悪いです。
でも思えばすごい話で、女の子の体の中に、男女二つの心が入ってるという設定がとにかくすごい。普段は王子として男装しているが、好きな人の前では女装(女の子なのに!)するっていうのがまたすごい。魔法使いに魔法の剣で胸を切り裂かれて女の心heart01(←ハート形で手に持てるサイズなんだ)を取られてしまうシーンとか、手元に本はないけど今でも鮮明に思い出せます。設定といい、帽子に大きなリボンをつけた倒錯的かつキュートなサファイア王子の衣裳といい、さすが宝塚で養われた感性だよなあ。――などと立ったまま考えていた。

わたなべまさこ先生の原画(本物)を見たとき、突然かぶらペンに墨汁をつけて絵を描く感覚を鮮明に思い出した。こういうものにも身体感覚があるのかと非常に驚く。太い線を引いて少し墨汁が盛り上がる感じとか、細い線で金髪のツヤを描いていく感じとか、体が勝手に分かる。もう長い間ペンなんか持ってないのに、不思議だ。
展示は「聖ロザリンド」、読んだことは……あるかも知れないが、他のホラー物と混ざっているような気がする。どの話も(そして絵も)半端じゃなく怖かったという記憶が。
何より怖いすごいのは、先生が今なお現役であることと、絵柄がほとんど変わっていないこと。「金瓶梅」のカラー原稿を見てそう思った。
(※Yahoo!コミックで「聖ロザリンド」立ち読みした。マジ怖いshockんですけど。指を…歯で噛みちぎったって……ギャー!)

松本零士先生と石ノ森章太郎先生、どちらの作品も私の血肉になっているはずだけれども、案外少女マンガ時代は読んでいない。しかしお二方とも、なんじゃこのカマトトぶりは!というくらい可愛い絵を描くのですよねえ、あの顔で。石ノ森先生の「竜神沼」は少女マンガに分けていいのか?ちょっと未分化な感じじゃないか?

ちばてつや先生の少女マンガも、知ってはいるが読んだ記憶がない……。でも、女の子がやたら可愛いです。眼を大きく描くと可愛くなるんだけど、ちば先生の絵ではそんな大きく描かれていないにもかかわらず可愛い。ポーズなんかも自然で可愛い。「1・2・3と4・5・ロク」のカラー原画はちょっと萌えかも。いくつか展示されているカラー原画、どれも色使いがハッとするくらい鮮やかで、感性が若々しいんだろうなあ。

水野英子先生の昔のポップな絵、めちゃくちゃお洒落。しかし残念なことに読んでない。TVモニターで、水野先生が女性の黒髪部分にペンを入れている動画が流されている。長々と丹念に描いているその部分、そばに展示されている実物原稿を見ると、とても小さい。何かもう職人技。あらためて思う、マンガは職人芸だ。

牧美也子先生の絵を元にリカちゃんが作られたとは、知らなかった!そこはかとなく松本零士先生と絵が似ているのはご夫婦だからか。鶏が先か卵が先か(意味不明)。

才色兼備で性格も良く、生で見たらオーラが出ていた(知人談)という、非の打ちどころのない里中満智子先生の、チラシの裏に書いたネームが妙に印象に残りました。こんな価値のあるチラシの裏がかつてあっただろうか。しかもちぎってあるし……。

続いて一条ゆかり池田理代子美内すずえ竹宮恵子山岸涼子萩尾望都!――の諸先生方。豪華絢爛すぎてくらくらします。カラー絵は美術品だね。特に萩尾先生の色の使い方は、見るたび唸る。きっと物を見る回路が違うんだな。
山岸先生ご所望の花瓶……あれはむしろ土器じゃないですか。でもって何か憑いてませんか(←全くそっち方面鈍いですが、そんな気がした)。

陸奥A子くらもちふさこ岩舘真理子――の諸先生方はリアルで読んでいてもおかしくないのだが、印象極めて薄い。たぶん少女としての世界が違う、と思ったのでしょう。

佐藤史生先生のカラー・モノクロ原稿に感無量。基板の上に浮かぶ神(天人?)のカラー絵(「ワン・ゼロ」)がたまりませんでした。さらに「『アラビアのロレンス』ノート」に驚嘆。20代の大半「アラビアのロレンス」にハマっていたって……。なぜそこまで……。でも展示されていたページの鉛筆描きの男は、ピーター・オトゥールじゃなくてオマー・シャリフですよね、どう見ても。

そう言えば吉田秋生先生の作品はやたら映画化されているが(そしてあまり成功しているように見えないが)、なぜ「バナナ・フィッシュ」を映像化しようという奴が現れないのだろうか。あれが一番映画向きだと思うけどな。

岡野玲子CLAMP今市子よしながふみ――の諸先生方は食わず嫌いと言うか……(あー、CLAMPは食ったが不味かったので嫌い、だな。っていうか少女マンガなのアレ?)。でも「陰陽師」と「百鬼夜行抄(ぶ…文鳥萌え……)」は死ぬまでには読んでおきたい。どっかの温泉宿の図書コーナーに並んでて、風呂上がりにがーっと読破、とかいうのができれば望ましい。

実は図書コーナー、会場にあったんですけどね。未読の佐藤本(「夢見る惑星」の続編と作者語りがてんこもりだったshine)をじっくり読んだら疲れ果てた(会場が暗いので、目が)。

しかしやっぱり出展作家の選抜方法がよく分からないのであった。
例えば庄司陽子・大和和紀などの一世風靡的ベストセラー作家や、あるいは和田慎二・柴田昌弘・魔夜峰夫などの男性作家が取り上げられてもいいはずなのに……。なんか大人の事情なのかしら。

あとは原稿の散逸という、マンガ業界の恐るべき実態も知ることができ、あらあらって感じです。今回、身体感覚まで呼び覚ます生の原稿の力(浮き出るペンタッチ、盛り上がるホワイト、スクリーントーンのエッジ、等々)を感じただけに。

とにかく、かなり貴重なものを見ることができたと思います。
春休み前の空いているうちに是非。

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