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「レッドクリフ」 ジョン・ウー節に滲む銀幕

「レッドクリフ PartⅠ」を(ほぼ貸切状態で)観て参りました。

銃弾や爆薬がなくても呉宇森は呉宇森だったです。ごめんなさい。
「えー、三国志とか興味ないしー」なんて言っておきながら、あんまりな手のひら返しが恥ずかしいので、先に謝っちゃいます。すみませんでした。

また、黒猫亭様のレビュー「赤壁はなぜ赫い 予告編第一夜第二夜第三夜最終夜」を拝見しなければ劇場に行くこともなかったので、あらためて感謝申し上げます。
そういう経緯ゆえ、黒猫亭様の文章を前提にした感想などもありますが、ご容赦下さい。

さてジョン・ウーといえばアクション。そのアクションはやはりため息もの。

戦闘シーンは血飛沫の雨と散る陰惨な光景ではありますが、死力を尽くして戦う男たちの姿に思わず見入ってしまう、一種の美でありました。槍を振るう、刀で薙ぐ、身体を翻す、まさに一挙手一投足をあらゆる角度から、無数のカットで、浴びるほど堪能できます。この戦闘シーンだけ入っているDVDがあったら買ってもいい。「男たちの挽歌」の港湾銃撃戦の如く、繰り返し見ても飽きない(というか、何度でも見たくなる)名場面の数々、燃えましたね。

初っ端から白馬の王子・趙雲にハートを鷲掴まれまくり。あわや敵の手に落ちんとする主君の愛児を、単騎乗り込んで奇蹟のように救出する勇者(母親は自分が足手まといだと察して自殺したので救えず痛恨なのですが、呉作品では女性は盲腸みたいなもんだから)。飛んでくる槍を疾駆しながら掴む闘志に満ちた顔と、腕の中の赤ん坊を見る慈愛に満ちた顔とのギャップがたまらんです。愛馬白龍も勇敢でお利口さんで可愛い。

関公はもうお約束というか型通りというか、特撮ヒーローみたいな超人的爆発的強さが快感です。曹操ですら心動かされる、武人の中の武人。暴れまくった後にぴたりと静止した姿は京劇さながら、決めポーズに身震いします。

あ、張飛も嫌いじゃなかったですよ。空を裂く大音声とか、馬に体当たりとか、プリミティブな強さに細胞レベルで興奮するというか。

この3人+孔明に慕われ忠義を尽くされる劉備は、義を重んじ情に篤い名君と思われますが、何となく泳ぎ気味な眼と趣味と実益を兼ねた草鞋編みとで、不思議なキャラに見えました。きっと奥方を二人も失ったので落胆が激しいのですね。

3忠臣を素直にカッコイイと思える一方で、孔明や周瑜についつっこみたくなるのは、人物が複雑だからか、それとも演じている役者に先入観があり過ぎるからか……。

ちなみに、金城武は「恋する惑星」あたりのイメージを引きずって「アヤシイ目の油断ならない兄ちゃん」(←だって、日本語と英語はともかく、台湾語と広東語と北京語を自由に使い分けてるんだもん)、梁朝傑は張學友と共演したB級映画(タイトル忘れた)の印象で「いつも貧乏くじを引く仔犬の瞳を持つ男 」なんですけどね。まあ単なる偏見なのでおいといて。

特に周瑜のミスター・パーフェクトぶりはこっ恥ずかしくなるほどですが、これを盟友周潤發で撮ろうとした呉監督の気持ちは、何となく分からなくもないです。男が惚れる(もちろん女も惚れる)、非の打ちどころのない、男の中の男。そこへいい子ちゃんトニー孔明が「一緒に戦いませんか」とやってくる……ややありがちな感じですが、せめて10年前だったら。
でも過去の映画情報には、劉備=周潤發、曹操=渡辺謙(孫権=張震と顔立ちかぶりそう)とか、あるいは黄蓋=周潤發とか(これすら実現しなかったのは女房か。女房のせいなのか)あって、もうケセラセラ。うん、結果オーライ。

で、その孔明meets周瑜(+孫権)のあたりがまたジョン・ウー節だなあと思うのですが、世界市場を視野に入れた万人に優しいユニバーサル演出も相まって、くどいっす

演習中の笛修理も水牛盗人始末も琴セッションも、周瑜と孔明が理解し合う過程を説明する素晴らしいエピソードだというのは分かるんです。しかし、分かりやすいだけにくどい。そしてこそばゆい。「挽歌Ⅱ」で、Mark哥の双子の弟ケンと殺し屋とが好敵手として撃ち合う赤面もののアレを別方向にバージョンアップしたようです。くうう、これに耐えられないようじゃまだまだか(何が)。

そして孔明。そんな口説きの手管を一体どこで覚えたんだと問い詰めたくなるような、ファム・ファタルもとい、オム・ファタルぶりです。思春期のようにイラついている孫権に流し目をくれて焚きつけたり、言葉に含みを持たせつつ周瑜と視線を絡めたり。

ああ、ショウ・ブラ師匠筋から受け継いだ独特のカラーが、また……と冷や冷やしていましたが、さすが海外が長いウー監督、「挽歌」の轍は踏みません。周瑜と小喬の仲睦まじいベッドシーンを入れて、誤解を回避しています。まあ、欧米人はごまかせてもアジア人はごまかせないけどね、ふひひ。
あ、このベッドシーン(とか後で小喬が周瑜に包帯を巻くシーン←これもかなり変。お前が包帯か!と思いました)が不必要に長いのは、秘かに「ラスト、コーション」のアン・リー監督に「私だってこれくらいできる」と対抗意識を燃やした結果ではないかと(違)。

話を無理矢理元に戻すと、偉大な男(周瑜)をよく理解するのはやはり偉大な男(孔明)であるということなのですねきっと。どのくらい偉大かって、呉国に乗り込んですぐにトップを手懐けるの信頼を勝ち得る人柄。古今のあらゆる兵法に通じる博学。地に耳を当て、聞こえる響きで敵の陣形を読み取る特殊能力。そして秘技・鳩遣い。魏の水軍の布陣を偵察させるために飛ばしたように見えましたが、鳩が得たデータを一体どのように回収するのでしょうか(まさか鳩と話せるとか)。それが明かされるだけでもPartⅡを観る価値があろうというもの。

そして、最大の武器「キラキラ目」(「赤壁はなぜ赫い 第二夜・第三夜」参照)。金城孔明がいたくお気に召された黒猫亭様の、若き軍師の清冽さを表さんがための単なるレトリックだと思っていたのです。しかし映画を観たら本当にキラキラしてるし!トニー周瑜と並んで二人が同時に同じ方向を見ているシーンで確認しますと、明らかに金城孔明の瞳の中の反射光(マンガで言うお星様)が多い。な、なぜだ。
黒目がちだからそう見えるとか、眼球の表面が特殊(サッカーボールとかミラーボール状)なんだとか、専用レフ板を使っているとか、散々考えたのですが分からず……。あCG処理?

さて、不思議ちゃん孔明の奇策「八卦の陣」が図に当たって、曹操軍との地上戦を制する連合軍。戦いの終盤、決着までもう少しのところで、またまた羽箒を残して消える周瑜。彼は沈着冷静な司令官であるだけではなく、戦いの中に身を躍らせる熱き武人だったのですね。旋風の如く、鬼神の如く、敵兵をなぎ倒し、曹操軍の旗を奪い、自らの手で戦いを終わらせます。
そのとき趙雲を庇って矢に当たるのですが、左肩に刺さった矢を引っこ抜き、刃をかいくぐって跳躍し、敵兵の後ろ首を突いて文字通り一矢報いる(じゃなくて百倍返しか)場面は、おそらく梁朝傑史上最高のアクションシーン。

奪った旗棹を地面に逆さに突き立てた周瑜の後姿が印象的です。佇むシルエットに漲る、断固たる闘志。「どれほどの困難が待ち受けようとも、怯むな。戦え」と語る呉宇森映画は、常に男たちの魂を鼓舞してやまないのであります。

中華人民共和国という大スポンサーを抱えながら、国家宣伝映画にはせず飽くまでジョン・ウー映画を貫き通した呉監督と、一度は降りた作品に戻り、とりとめのない男の理想像を血の通った人物に作り上げた梁朝傑に、スタンディングオベーションを捧げましょう。

久々に血が滾るほど燃えたわけですが(最近北方水滸伝サボってるし)、若干ツッコミモードになってしまったのは、上映前に流れたスティーブン・セガールの映画「ライジン」CM(←バカ)のせいだと言い訳しておきます。4人(私以外ご老人ばかり)しかいなかったから笑うに笑えず、突っ込みたい!と煩悶しながら本編に突入してしまったのでした。

 

参考サイト

sina.com.cn「赤壁」特集

おまけ

「レッドクリフ脳内メーカー」(←微妙)

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コメント

到頭ご覧になりましたか、お気に召したようで何よりです。また、再々に亘る拙ブログのご紹介、有り難うございます。

前半の見せ場はやっぱり趙雲一騎駆けですよね、胡軍のスリリングなアクションと力強さ、表情の良さが何とも言えません。ここですでにグッと持って行かれますね。何だか無闇に胸に迫るものがあります。

>>世界市場を視野に入れた万人に優しいユニバーサル演出も相まって、くどいっす。

この映画はもう、尋常じゃなくわかりやすい語り口なんで、そう謂う映画だと受け容れましょう(笑)。とにかく何処をとってもベタなんで、この映画だけを観てもどんなお話なのかわかるように作っているんですよ。

>>ああ、ショウ・ブラ師匠筋から受け継いだ独特のカラーが、また……

げらげらげら。師匠の張徹から断袖好みまで受け継いでいるのですか(笑)。まあ、師匠のように自分のアイドルの着せ替え映画(しかもセンスがみんな微妙)を撮るほどでなければ大丈夫だと思いますが(木亥火暴!!)。

>>しかし映画を観たら本当にキラキラしてるし!

観た人だけのお楽しみとして詳しく説明はしなかったんですが、アレは本当にキラキラしているのです(笑)。あらゆる場面で、何故か諸葛亮の目だけが無駄にキラキラ光っているのは何故なんでしょう。きっと三鷹さんの皓い歯が、ご婦人方の前ではいつでもキラリと光っているのと同じようなものなんですよ(笑)。

>>おそらく梁朝傑史上最高のアクションシーン。

彼は日頃あんまりアクションの印象がないですからねぇ。勿論、やればそこそこ出来るらしいですが、そんなに得意ではないみたいですし、今回は「ラスト、コーション」の撮影で相当へとへとになっていたみたいなのによく頑張りましたね(笑)。

そう謂えば、中村獅童は「そんなに出来ないだろう」と思っていたら結構出来るので、どんどん見せ場を増やした結果、史実とは全然違う人になってしまったので、役名が変わったと謂う経緯があります(笑)。本当は「甘寧」と謂う役だったはずなんですが、幾ら何でも元の人物と違いすぎるので「甘興」と謂う名前に変わったそうです。

>>「どれほどの困難が待ち受けようとも、怯むな。戦え」と語る呉宇森映画は、常に男たちの魂を鼓舞してやまないのであります。

これぞ「漢」の映画と謂う感じですよね。いや、シャレじゃないんですが、題材が題材だけにややこしい(笑)。

映画的興奮の大御馳走だったエモーショナルな「レッドクリフ」を観た後に「チェ」を観ると、また違った感慨があります。でも、「チェ」のほうは604さんにはお奨め出来ないですね、まったくエモーショナルな映画ではないので。

投稿: 黒猫亭 | 2009年2月12日 (木) 08時14分

>>前半の見せ場はやっぱり趙雲一騎駆けですよね

そんなことを言っていると、劉徳華が趙雲を演じる「三国志」の話題が(笑)。監督は李仁港ですか。

投稿: 黒猫亭 | 2009年2月12日 (木) 09時04分

コメントありがとうございます。

もう何かホントに、このたびはお世話になりましてcoldsweats01
趙雲が半端なくツボったあたりから止まらなくなりました。アンディ・ラウでは多分こうは行きません。

思わず吹くような場面が何度もありはしましたが(4人しかいなかったので吹くのは我慢しました)、確かにこの分かりやすい作りで登場人物はすぐに憶えられたし、何のストレスもなく物語を追っていけたので、これはこれでアリなのだと思います。

金城武ははっきり言って舐め切っておりましたので、キラキラには驚愕でした。スマスマではそんなにきらめいてなかったのに……録画を消してしまったので分かりませんが。

「ゴリ-中井進化論」は分かる気が致しますが、そこにトニーを入れるのはどうにも承服できません。ゴリと似ているのは髪型とフレンドリーさだけだし(でも一瞬「あ、似てる」と思ってしまった自分が!)、中井貴一と似ているのは作りこんだ老け顔のほうれい線だけではありませんか。
長期に渡る疲れが取れれば爽やか明星に戻りますので。とか言って次はカンフーマスター……心配です。

キューバとキューバ革命には多少興味がありますし、ここしばらくのキーワードは「革命」だと思っておりますので、「チェ」2部作は何となく気になってはいたのですが、どうも私向きではないようで。ご忠告に従います。

次は「天堂口」、そしてどこかで「アーメン・オーメン・カンフーメン」&「大英雄」を借りてこようかとhappy02

投稿: 604 | 2009年2月12日 (木) 13時56分

>604さん

>>金城武ははっきり言って舐め切っておりましたので、キラキラには驚愕でした。

やはり、604さんが仰る通りCGなのでしょうか(笑)。「理想を抱いた男の瞳はいつも輝いていなければならない」とか言い張って(笑)。

金城武は、三〇過ぎてから漸く固有の柄が出来たような気がしますね。若い頃は単なる軽薄な二枚目と謂う感じでしたが、「リターナー」などで演じたような、年齢の割には悪ズレしていなくて子供のように善良なキャラを演じると好いですね。

レッドクリフの直前に「K-20」を観に行ったので、余計にそう謂う印象を強く感じました。基本的に、K-20の平吉は三〇過ぎた男が演じるようなキャラじゃないですよ(笑)。それが通用してしまう辺りが金城の特異な柄なのかな、と。

>>「ゴリ-中井進化論」は分かる気が致しますが、そこにトニーを入れるのはどうにも承服できません。

>>次は「天堂口」、そしてどこかで「アーメン・オーメン・カンフーメン」&「大英雄」を借りてこようかと

「大英雄」は必見です。この映画の偉仔こそ、ゴリと中井貴一を繋ぐミッシング・リンクと謂えるでしょう(木亥火暴!!)。

いやもう、張国栄と王祖賢と謂う水も滴る美男・美女カップルが濃ゆいメイクで「流し目剣法」の鍛錬に励む辺りとか、莫迦が当たり前のお正月映画でもここまで莫迦な映画はそうそうないらしいですよ(木亥火暴!!)。

なんでも、王家衛の「東邪西毒」が難航しまくったせいで、正月興行に穴が空きそうだったので、急遽ちょちょいのちょいで撮った安直な映画らしいんですが、みんなあのイヤな現場のストレスを忘れる為に思い切って弾けまくったらしくて、コメディもやるのが当たり前の中華映画人でも、あそこまで見栄や体裁をかなぐり捨てて莫迦をやるのは珍しいそうです。

>>キューバとキューバ革命には多少興味がありますし、ここしばらくのキーワードは「革命」だと思っておりますので、「チェ」2部作は何となく気になってはいたのですが、どうも私向きではないようで。

断定したものかどうか憚られるのですが、ウチのほうでレビューした通りの内容で、「革命」と謂う言葉で人々がイメージするような熱狂を極力排し、物語性までも排除した静かな映画です。なので、これまで604さんがこちらで言及してこられた映画とはまったく異質な映画であることは間違いないです。

勿論、それまでの嗜好にない映画がたまたまツボに入ると謂うこともありますし、「実はこう謂う映画も好きなんです」的な部分があるのかもしれませんので、断言は出来ませんが。

投稿: 黒猫亭 | 2009年2月12日 (木) 20時32分

いや、多分「チェ」は無理です。黒猫亭様のレビューを拝見して、淡々と再現フィルムの流れるどよーんとした劇場内で居眠りしている自分が思い浮かびました。

ところで金城武は35歳というのにびっくり、漠然とまだ28くらいだと思っておりました。今までに目がキラキラした男だという印象は抱いたことがないので、ここはやはりCG説が有力かとhappy01

「大英雄」は観たような観てないような、例によって記憶が定かでなく……何しろ昔はバカ映画が多くてcoldsweats01しかしこれほどの豪華キャストを使ったバカ映画は空前絶後でしょうね。今のトニーさんを思うと感慨深いです。DVDもいいですけど、劇場で多勢で観たら楽しいだろうなあheart04

投稿: 604 | 2009年2月12日 (木) 23時16分

字幕版オンエアを観たら、趙雲の愛馬の名前を間違えていたのに気付いたので訂正しました。「龍」が「郎」に見えるなんて……eyeglass

可愛いなあ馬。欲しいなあマイ馬。

投稿: 604 | 2009年5月 4日 (月) 01時53分

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