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「天堂口」 正調ノワールの苦き後味

ブラッド・ブラザーズ -天堂口-

を上海目当てで観て参りましたが、租界のエキゾチックな市街の様子はちょびっとしか出てきませんでしたcrying。ましてや、淀みながら動く時代の空気なんて影も形も。
舞台の大半がキャバレー「天堂口」の建物内部と路地くらいで、んー、うまくごまかしたという感じですね。例えるならば背景の書き込みの非常に少ないマンガみたいなモンで。

そもそも上海である必然性が全くございません。40年前の香港だっていいような話です。「上海灘」や「上海グランド」で醸された、馴染みのある世界観を利用しただけのギャング物っちゅうことですかね。

ストーリーも、特にひねりも伏線もなく、淡々と進んで淡々と終わっていきます。

「フォンとフーとターカンは仲の良い友だちでした。でも田舎の暮しはとても貧しかったので、3人は上海でお金を稼ぐことにしました。上海では車引きをしてから給仕になるつもりでしたが、ギャングのボスにヤバい仕事を頼まれたのがきっかけで、いつの間にかギャングになってしまいました」と、全編こういうノリです。

あーそーですか、と観る以外ございませんgawk

田舎者3人組が都会で運命を狂わせてゆくのはいいんです、ノワールだから。ギャングに明日などなく、あるのはただ破滅のみ。足抜けしてハッピーエンドなんてあり得ません。
だからラストまでの間に、いかにドラマを盛り上げるかというのが腕の見せ所だと思うのですが。

盛り上がらないの……○| ̄|_

まるで兄弟のような3人(ターカンとフーが兄弟、フォンはフーの友人)の心が、都会の絵の具に染まってバラバラに」を悲劇として描いていると思われますが、3人の絆を感じさせるエピソードがこれと言って特にないので、「どうしてこんなことにcrying」という盛り上がりに欠けるんですよねえ。

例えば「男たちの挽歌」のMark哥とホーさんの絆は、昔語りという形で表現されるだけ。ですが、「しくじった自分の代わりにホーがホットビールbeer(絞りたて)を飲んだんだ」と衝撃の内容を、Markが目を潤ませ声を詰まらせて語ることで、修羅場をくぐり抜けてきた二人の固い友情を感じさせるエピソードになっています。
会話だけでもこれだけのインパクトがあるんだから、何か工夫しようよ。

ギャングのボス・ホンと、その片腕で殺し屋のマークも、兄弟という設定(余りにも顔が似ていないので、きっと腹違いか種違い)。この2人も兄弟でありながら殺し合うのですが、そこに何のドラマもないので感動もない。女の奪い合いって感じでもなかったような。

ああ、ヤバい仕事をやるというターカンとフーに、自分は抜けると言って去ったフォンが、敵対組織に囲まれた2人を救いに戻る、のあたりが絆なのだろうか。でもあそこは、銃を初めて持つ田舎の兄ちゃんが瞬く間に敵5人を倒したあり得なさの方が勝っていたのでそうは思えなかった。

「俺を裏切った二人(マークとルル)を殺せ」と命令するホン。何となくつるんでいた(←ようにしか見えなかった)マークを殺そうとするターカン。仲間だろと彼を説得しようとして撃たれるフォン。耐え切れず兄を撃つフー。

手負いながらホンを殺し、心優しい弟までも捨てて、ボスの座に就いたターカン。フーの遺体に呆然となるフォンですが、マークとルルと共に故郷へ逃げます。貧しいけれど温かな田舎家で、都会を忘れやり直そうとする3人。それも束の間、ターカンの刺客(だと思うんだけど)がやってきてルルを射殺。

穏やかな田舎暮らしを蹂躙された怒りに、男たちが立ち上がった!(って、ルルを殺されたマークは分かるけど、何でフォンも?そんな侠気の人だったか?)
天堂口に乗り込み、店内で銃撃戦(どうでもいいけど、何故フォンはこんなに射撃が上手いのだろうか。主人公だからか)を繰り広げた末、ターカンに会う二人。狂った運命に怒るも、昔の仲間をどうしても殺せないフォンに代わって、マークが「これも宿命だ」とあっさりターカンを撃ち殺しますcoldsweats02

店の外に出てくるマーク。フォンが続かないということは、(結構撃たれてたし)ご臨終なのか?!田舎の母と妹と嫁はどーすんのよ?!!
そんなことに構わず、コートの衿を立てて渋く去ってゆくマーク。これが特別出演:張震の特権か。そして、誰もいなくなった……wobbly

えー、観終わって感じるこの虚しさ、どこか覚えがあります。
「愛と復讐のナントカ」「愛と悲しみのナントカ」「ナントカの挽歌」「極道ナントカ」などとタイトルのついた香港ヤクザもの、さぞかしカッコイイ周潤發が見られるだろうと思ったらとんでもない、支離滅裂ストーリー&へなちょこアクション+爆発ドカーン→劇終sweat02な、徒労感溢れる香港ノワールをいくつも観てきた私には、この空虚な感じこそが正調ノワールのテイストですね。まあ負け惜しみだけどねはははは。

タイトルもカッコつけ過ぎ。

上海血まみれ兄弟 俺たちに天国はなかった

で充分でしょ。

まあまあなのは主題歌・衣装くらい。あのトレーラーで我慢しておけば良かったのだな。あ、あとは張震のオデコが意外に広いと分かったのが収穫(?)。危ない目つきとオデコから何故か故古尾谷雅人氏を連想しました。これまでの出演作品を見ると結構なベテランで、彼にも油断できません。

本作の監督アレクシ・タンという人は若い才能のようなので、きっと本格的に開花するのはこれからなのでしょう。彼を見出したウー先生のキャリアにも「世界一つまらないクソ映画」と絶賛されるアレが燦然と輝いているわけだし、君が将来ビッグになった時、「昔『天堂口』を劇場で見ちゃってさあ」とトホホな自慢話ができることを楽しみにしているよ。

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コメント

そういえばこの前どこかのブログで、「レッドクリフよりブラッドブラザーズの方が断然面白かった」と書いておられる人がいた。

世の中いろんな人がいるもんだと思った。

投稿: 604 | 2009年12月15日 (火) 18時15分

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